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映画レビュー「Beauty Academy of Kabul(ビューティー・アカデミー・オブ・カブール)」

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記事初出:2006年05月23日 seesaaブログからの引っ越し

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基本情報
「Beauty Academy of Kabul」(2006、アメリカ)
監督:Liz Mermin
製作:Liz Mermin、Nigel Noble

公式サイト
http://www.beautyacademyofkabul.com/

ストーリーと映画情報
タリバン政権崩壊後のアフガニスタンの首都カブールに美容師を養成所が設立された。タリバン政権下では顔をさらけ出して外出することすら禁じられていた女性達が、オシャレに目覚めていく瞬間をカメラが捉えていく。

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2001年のアフガン侵攻は何をもたらしたのか
2001年9/11日、アメリカ同時多発テロが発生し、アメリカ政府は犯人を国際テロ組織アルカイダと断定。当時、アルカイダをかくまっているとされたタリバン政権に、首謀者と目されるオサマ・ビン・ラディンの身柄引き渡しを要求するが、タリバン側がこれを拒否したため、アメリカは武力による報復に出た。圧倒的な軍事力の差ゆえに紛争自体は、わずか約2ヶ月で終結したが、空爆により多くの民間人も犠牲になった。
今ではすっかり報道されることが少なくなってしまったこのアフガニスタン。現在でも約2万人のアメリカ軍テロ対策のために滞在しており、国民投票の際等は、実際に爆破テロなども起きたりしている。
この戦争は後に続くブッシュ政権の強制世界民主化政策の嚆矢として語られることが専らで、ブッシュ政権のエゴの最初の犠牲者と云われることもあります。それも一面の真実であるかもしれませんが、はたしてあの戦争がもたらしたものはそれだけだったのでしょうか?多くの犠牲者?それとも真の平和と自由への第一歩?

正当化のための建前もまた真実かもしれない
タリバン政権下のアフガンでは女性は参政権も教育を受ける権利もなく、外出する際にはブルカと呼ばれる長い布で顔と髪の毛全体を覆い隠さなくてはなりませんでした。長いタリバンの支配からようやく解放されて女性の社会進出も徐々に認められてきているようです。一方、あの戦争による人的被害は確かに甚大なものであったのも事実です。犠牲者の数は公的には明らかにされていないものの、戦争により多くに民間人が死亡し、大量の難民を生み出したことは間違いありません。(こちらのサイトを参照http://www.eeeweb.com/~backup/haroon.html)
このドキュメンタリー映画が捉えているものは、タリバン政権下では許されなかったオシャレをすることを心から楽しむ女性達の姿です。彼女達がボランティアのアメリカ人ヘアードレッサー達と真剣にヘアーメイクに取り組む表情、美しくかみが仕上がった時の喜びが、それだけで観る人を感動させる。そしてこのアカデミーを卒業してく女性達は、それぞれに自分の店を持ち、経済的な自立を目指していきます。そうした夢を見ることすら許されなかったタリバン政権下の時代から考えると、素晴らしいことであると思います。しかし、皮肉なことにそれをもたらしてくれたのが、多くの命を犠牲にしたアメリカの武力攻撃であったこともまた事実です。またタリバンというのは、実際にかなり抑圧的な支配を行っていたのも事実であり、多くの人間が虐殺されているのも確かなようです(映画の中でも、アカデミーの女性がインタビューで言及している)。「圧政から人々を解放するため」。ブッシュが自ら起こした戦争を正当化するために作られたこの言葉は、あながち嘘ばかりではないようです。ブッシュの、アメリカのエゴイスティックな行動によりたくさんの人が犠牲になったのも事実ですが、それにより多くのひとが恩恵を受けているのもどうやら事実のようです。
この映画の中には、真の喜びに満ちあふれた女性たちが確かに存在している。

複雑な問題を背景にした作品ですが、作品自体はいたってシンプルなものです。初めてオシャレをする「自由」を得た女性達の弾けんばかりの笑顔に素直に感動します。
日本で公開される可能性は低いでしょうが、もしご覧になる機会があったら見てほしい作品の一つです。