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映画レビュー「オフサイド・ガールズ」

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記事初出:2007年07月05日 seesaaJブログからの引っ越し

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基本情報
「オフサイド・ガールズ」(2007、イラン)
監督:ジャファル・パナヒ(白い風船、チャドルと生きる)
脚本:ジャファル・パナヒ、ジャドメヘル・ラスティン
製作:ジャファル・パナヒ
出演:シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ

2006ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞

公式サイト
http://www.espace-sarou.co.jp/offside/index.htm

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ジャファル・パナヒ監督の前作であるベネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品「チャドルと生きる」です。
   

ストーリーと基本情報
イラン代表が、ドイツワールドカップの出場権を懸けた大一番の一戦をなんとか見ようと、男装してスタジアムに潜り込む少女をドキュメンタリータッチで追いかけたドラマ。イランでは、スタジアムで女性がスポーツ観戦をすることを禁じられている。しかし、サッカーはイランでは国民的スポーツ。運命の大一番をなんとか生で見ようと警備の目をかいくぐってスタジアムに六人の少女は潜入するのだが、あえなく捕まってしまい・・・・

イランの女性を描くパナヒ監督
イスラムのシーア派国家であるイランにおいて、女性の権利は著しく制限されている。外出時には、必ずヘジャブの着用を義務付けられていること、などは勇名だが、その他にも、離婚の際、子供を引き取ることが困難であることや、裁判などでの証言も、二人でようやく男性一人分となる。事件、事故などによる損害賠償も男性に比べて半分の額であるという。メディアの検閲も非常に強い。全てのメディアが文化イスラム指導省の承認がなくては、作品を公開することができない。
デビュー作「白い風船」以来、全ての映画で女性を主人公に据えてきたジャファル・パナヒ監督の最近の作品は、イランでは上映されていないという。イラン社会の中で女性が受ける理不尽さを描いた前作「チャドルと生きる」は、勿論のこと、前々作もまた公開されていないらしい。極めてイラン国内では、「政治的」に挑発的と思われ勝ちな題材と採るためであろう。だが、その実、パナヒ監督の作品は、主題そのものが、政治に対する異議申し立てというわけではなく、人間そのものに焦点を当てた優れたドラマである。今作「オフサイド・ガールズ」もまた、不当な差別に対する当てつけというわけではなく、六人の少女の純な気持ちから生まれた小さな冒険活劇といった赴きだ。

冒頭、少女が一人バスに乗っている。一見すると少年の格好をしている。顔にはイランの国旗をあしらったフェイスペインティング、サッカーイラン代表のタオルマフラーを首に下げ、帽子を被っている。ほかの少年達が女ではないかと囁き始める。スタジアムに着いた少女を手持ちカメラが追う。まるでドキュメンタリーさながらの光景。実際に試合が行われたスタジアムで撮影されたこのシーンの臨場感は、素晴らしい。どんな小細工も本物には勝てない。なんとか警備の目を盗んで中に入ろうとする少女、だがあっけなく捕まってしまい、スタジアム入り口近くに閉じ込められてしまう。他にも同じように男装して潜り込んだ少女達がいた。警備ぼ兵隊の格好をした少女までいる。試合会場はすぐそこなのに、試合を見ることができない。しかし、あつい歓声は聞こえてくる。一人はトイレに行くと見せかけ脱走し、一人はなんで日本人のサポーターなら女性でも入れるのに、イランの女は禁止なんだと問いつめ、若い兵隊をイライラさせる。男勝りなほど元気な彼女達は、結局車で家まで強制的に帰らせれるハメになる。

帰りの車中で、イラン代表の勝利を知った少女達は、車を飛び出し、男達に混じってお祭り騒ぎ。この時ばかりは、男も女も関係ない。勝利を祝う気持ちには、男女の性差など無いのだ。イランの苦難の歴史を唄ったラストの歌は、どんな困難があってもあきらめない、この少女達にこそふさわしい。