ムカデ人間2の詳細なレビューきたこれ。
もうね、この監督トム・シックスはこれでカルト映画界に名を刻むことになると思うよ。。。
久々にでてきたカルト映画の大物だよなあ。サム・ライミに匹敵するセンスを感じるぜ。
前作ムカデ人間1を上回ることができるか注目です。
【編集部的映画批評】阿鼻叫喚の地獄に飛び込む勇気はあるか?キング・オブ・トラウマ映画 『ムカデ人間2』
以前こちらの批評で取り上げた『ムカデ人間』は、“男女3人の口と肛門を繋げる”というえげつない行為が行われる映画ながら、実は万人に楽しめる爽やかな映画だった。(批評記事はこちら)そして前作から約1年、誰もが予想だにしなかった続編『ムカデ人間2』が遂に公開されてしまう。18禁指定ですら公開が危ぶまれる、より過激な作品になったという噂が本当なのか、カルト映画のフジモトが身体を張って確かめてきた…。
『ムカデ人間2』
背が低く、醜く太った中年男マーティン。地下駐車場の警備員である彼の楽しみは、勤務中にパソコンで映画『ムカデ人間』のDVDを観ては妄想に耽ることだった。さらには、映画の場面写真を切り抜いてスクラップ・ブックにし、暇さえあればそれをながめてほくそ笑んでいた。やがて彼は、自分の中に邪悪に湧き上がる、ある欲望を我慢することができなくなっていく。それは映画同様、自分も人間を繋げ“ムカデ人間”を作りたいという想い。劇中のマッドサイエンティスト・ハイター博士の遺志を継ぐかのように、邪悪な欲望を実行に移していくマーティン。そして、遂には12人の罪もない男女を、“ムカデ人間”にしてしまうのだった。(作品情報へ)
フィクション『ムカデ人間』から生まれた真の恐怖におののけ!
本作の世界では映画『ムカデ人間』がフィクションである、という形で物語が進行していく。狂気の主人公・マーティンは『ムカデ人間』という映画に影響を受け、現実世界でそれを実行してしまうのだ。言い換えれば、あくまで前作は『ムカデ人間2』のための壮大な“前フリ”に過ぎなかったのである。本作には『ムカデ人間』で“繋がれる”三人の内の一人、アシュリンが本人役として登場。残りの二人も画面には現れないものの、台詞で登場するという粋な演出もある。また、前作で登場した刑事役の俳優も“ムカデ人間”として繋がれてしまう。一作目を観た方ならニンマリとするところだろう。一方で前作の舞台が美しいほどの色合いの自然豊かな郊外だったのに対し、本作はモノクロ作品で、ゴミゴミした都会の一角となっており、映画全体が重苦しい雰囲気に。『ムカデ人間』の虚構と『ムカデ人間2』の現実が対比を見せているのが面白いところだ。逆に言えば、『ムカデ人間』を観なければ、大幅にその魅力が半減してしまう作品でもあるのだ。
ヤバすぎる主人公・マーティンに戦慄せよ!
こういった世界観に加えて、本作を構築しているのが、マーティンという禍々しい存在。前作の“ムカデ人間”の創造者・ハイター博士は、確かにマッドサイエンティストだが、知的でどこか弱弱しいおじいちゃん。そのため、どこかしら滑稽で愛らしい部分さえあった。だが本作の主人公・マーティンは、彼とは全く違う、正真正銘の怪物である。小さな頃から家庭内でも虐待され、異常な母親に育てられ、ほぼ世間と関わらず、精神状態が幼いまま成長。しかも肉体的にも恵まれておらず、喘息持ち。ヒッチコックの名作スリラー『サイコ』に登場するノーマン・ベイツ以来の比較的よくある設定ではあるが、そこに生々しい狂気を加えているのが、マーティンを演じたローレンス・J・ハーベイの容姿。ハーベイはかつて子供番組にも出演していた経歴を持つようだが、その事実がかなり問題に思えてしまうほど、強烈な風貌である。
また、ハイター博士と違い、マーティンはムカデ人間となる対象に全くといっていいほど“美学”を持っていない。すなわち選り好みしないのである。とりあえずムカついた奴は巨大なバールで殴り、拉致。しあわせそうな臨月の妊婦も、拉致。近所の怖そうな兄ちゃんも、拉致。ただ虐げられた自分の鬱憤を晴らすために、“ムカデ人間”創造にいそしむのである。ただし一点だけこだわったのが、前述したアシュリンの存在。映画『ムカデ人間』を信奉する彼としては、彼女を本物の“ムカデ人間”とすることで、現実世界と『ムカデ人間』の世界を同じものにすることが出来るからだ。さらに、医学的・専門的知識の欠片もないマーティンは“ムカデ人間”の素材調達、結合手術などすべて見よう見まねで行ってしまうのである。まさに映画史上に残る最狂の主人公なのだ。
限界突破!男女12人の“結合地獄”に失禁寸前
実のところ、前述のようなメタフィクション的な物語や、マーティンの“幼さゆえ”の悪戦苦闘ぶりを見ている間は、前作『ムカデ人間』同様のオモシロ残酷映画として楽しむこともできる。ただしそれは、物語が佳境に入り、“ムカデ人間”創造のための壮絶な実験シーンに入るまでだ。麻酔なし、医学知識なし、日曜大工用の工具だけで行われるその行為が、どのようなものになるかは想像するだけで鳥肌が立つことだろう。加えて恐ろしいのが、“残酷行為”そのものの表現方法である。前作では巧みに直接的な描写を避け、結合手術の様子を描いていた。ところが本作では「これは現実である」と言わんばかりに、“行為そのもの”を見せてくるのだ。被験者の歯をハンマーでたたき折り、結合のために肛門を切り開き、工業用ホッチキスで繋ぎ合わせる。これ以上に残酷な場面がかつてあっただろうか。まさにキング・オブ・トラウマ映画と呼ぶに相応しい、悪夢のようなシーンだ。
そして、“ムカデ人間”の完成だけでは、マーティンの歪んだ欲望は満たされることはない。ここから本当の阿鼻叫喚の地獄が始まるのである。正直なところこの部分は文章にするのも憚られるので、ここでは控えることにする。実際に何が行われるのかは、劇場で、その目で確かめてほしい。ただし限界を超えた地獄を覗き込むには、それなりの覚悟は必要だ。
この文章を読んだあなたに言えることは一つだけ。「観る前に、食事だけは必ず済ませること」だ。
『ムカデ人間2』は7月14日(土)から新宿武蔵野館にてレイトロードショー。
提供:MOVIE ENTER – livedoorニュース
SOURCE:【編集部的映画批評】阿鼻叫喚の地獄に飛び込む勇気はあるか?キング・オブ・トラウマ映画 『ムカデ人間2』