まだまだ、既存の著作権団体の抵抗は続きそうです、というお話。
ISP様に置かれましては、真っ当な感覚で持って判断してただくようお願いいたします。
違法ダウンロード刑罰化の次は通信の秘密に踏み込む音楽権利団体
6月4日にJASRACより「音楽権利者6団体2社が新たな違法音楽配信対策を推進」というタイトルでリリースが出ているが、おそらく、改正著作権法が可決されることを見越しての発表だったのだろう。これによると、
①携帯向けの無料レンタル掲示板サービス事業者等、特定のプロバイダのサービス上で違法音楽配信が顕著であること
②一部の無料レンタル掲示板サービス事業者は、自社のサービス上の違法行為の氾濫に危機感を募らせていること
上記の2点によって一般社団法人「著作権情報集中処理機構(CDC)」が運用中の正規音楽配信の利用楽曲報告データ処理のためのDBとシステム「Fluzo」を活用し、違法音楽ファイルを特定するモジュールを開発したのだという。
このシステム「Fluzo-S」(音楽情報特定支援システム)を前述の携帯向けの無料レンタル掲示板サービス事業者等、特定のプロバイダのサービス上で走らせれば、違法ファイルを一網打尽に特定し、なおかつ削除することができるそうだ。
音楽権利者がネットを検索して違法なファイルがあるかどうかのチェックをする必要がなくなり、かつプロバイダ側も膨大なユーザーデータの中にある違法ファイルをピックアップして削除する手間が省ける一石二鳥のシステムであると。このシステムの導入の推進・拡大が違法音楽配信根絶に向けた大きな前進になるものと期待されるとしている。
こうしたシステムを導入するようにプロバイダに積極的に働き掛ける(つまり圧力をかけていく)こと、そしてあわせて、今後も音楽権利者6団体2社は、個人ユーザの違法ダウンロード阻止に向けた啓蒙啓発活動にも取り組んで行くことを明言してリリースは終わっている。
なお、音楽権利者6団体2社とは以下
・日本レコード協会(RIAJ)
・日本芸能実演家団体協議会
・実演家著作隣接権センター(CPRA)
・日本音楽事業者協会(JAME)
・日本音楽出版社協会(MPA)
・日本音楽制作者連盟(FMPJ)
・株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)
・株式会社イーライセンス
・日本音楽著作権協会(JASRAC)
ネット上では、このシステムが検閲に当たるのでは? または通信を傍受するので「通信の秘密」に抵触するのでは? といった疑問が出てきているようだ。2006年に「ぷららネットワークス」がWinnyの遮断を発表したことに対し、総務省が「通信の秘密の侵害に該当し、違法である」という指摘を行なったことがあるが、結局は「正当な業務行為」である場合に限り容認される形で落ち着いた。
さらに現在では、ほとんどのプロバイダが行っている迷惑メールフィルタリングサービスだが、プロバイダ側のメールサーバー側でフィルタリングする場合は、パケット(通信)を傍受しないと行えないわけで、これも「通信の秘密を侵害するが、正当業務行為であるとして違法ではない」とされている。
今回の違法ダウンロード刑罰化の決定により、この「Fluzo-S」を使った違法ファイルの特定および削除行為もおそらく「通信の秘密を侵害するが、正当業務行為であるとして違法ではない」とされる公算が強いと思われる。
このシステムの利用料はプロバイダ側から徴収しようとしているのだが、権利を守りたいのであれば音楽権利者6団体2社側が負担するのが筋だと思うのだが……。この業界のことはよくわからないが、いつも少し斜め上を行っている気がする。もちろん、今後このシステムがどう稼働して行くのかも注目していきたい。
togetter:JASRACの音楽ファイル検出ツールが憲法第21条の「通信の秘密」に抵触するのではという指摘
togetter:違法音楽ファイルを自動検知するシステム、インターネットの検閲?
■「日本音楽著作権協会」(JASRAC)
■「音楽権利者6団体2社が新たな違法音楽配信対策を推進」
■著作権情報集中処理機構(CDC)
提供:ITライフハック – livedoorニュース
SOURCE :違法ダウンロード刑罰化の次は通信の秘密に踏み込む音楽権利団体