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映画レビュー「タロットカード殺人事件(Scoop)」

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記事初出:2006年08月27日 seesaaブログからの引っ越し

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基本情報
「タロットカード殺人事件(Scoop)」(2006、アメリカ)
監督:ウディ・アレン(アニー・ホール、マッチ・ポイント、ハンナとその姉妹)
脚本:ウディ・アレン
制作:Gareth Wiley、Letty Aronson
出演:スカーレット・ヨハンソン(ロスト・イン・トランスレーション、マッチ・ポイント)、ヒュー・ジャックマン(X-メン)、ウディ・アレン

公式サイト

http://www.scoopmovie.net/

ストーリーと映画情報
友人を訪ねるためロンドンに滞在していたアメリカ人のジャーナリスト志望の学生、サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、たまたまアメリカ人マジシャンのシド(ウディ・アレン)のショーの最中に死亡したはずのイギリス人ジャーナリスト、ジョーに出くわし、連続殺人鬼についてのスクープを教わる。サンドラは、マジシャンのシドと協力してジョーが犯人であると告げた、ハンサムな金持ちのピーターに近づく・・・・
天才アレンが前作「マッチ・ポイント」に続いてロンドンを舞台に、主演にスカーレット・ヨハンソンを迎えたコメディ。

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アレンの傑作ミュージカル「世界中がアイラブユー」と前作「メリンダとメリンダ」です。
   

何故アレンの映画はこんなに面白いのか

今年は、八月の時点でアメリカでは二本のアレンの新作が封切られている。現在、71歳。しかも二本目の今作「Scoop」では主役級で出演もしている。本当にタフな人だ。すでにキャリアは40年ちかくになる。彼の監督作品はほとんど全て面白い。アメリカはもちろんヨーロッパ、日本にも熱烈な支持者が数多くいる、このアレン監督。彼の作品は何故こんなにも長い間、人々を夢中にさせるのだろうか。

ヨハンソン演じるサンドラはマジックショーの最中、アレン演じるシドに指名され箱に入り、そこで死んだジャーナリストジョーの亡霊?に出くわす。まずこのシチュエーション作りが絶妙に面白い。道ばたのカフェで亡霊に出くわしても大して面白くない。マジック用の箱の中で出会うから、サンドラもこれはマジックなのかと困惑する。もちろん映画を見ている観客は、彼が亡霊であることを事前に知らされている。観客はマジックなのかなんなのか困惑するサンドラを見て笑うことになる。亡霊として出てくるジョーを巡るシチュエーションも面白い。彼は三途の川を渡る船上でピーターに殺された女性に出会い、ジャーナリストとしての使命を果たさんとすべく亡霊としてマジックの箱の中に現れる(笑)死して尚、ジャーナリストたらんとするジョーはジャーナリストの鏡だ(笑)サンドラとピーターが出会うための画策もしっかりラストへの伏線となる。そして画策通りピーターはサンドラを気に入り、サンドラも恋に落ち始め、最初は亡霊の云う事でしかないと、懐疑的だったアレンの方が真剣に証拠探しに奔走し始める。見ているこちらは、全くなんの違和感もなくそのストーリーを受け入れている。アレンのシナリオは恐ろしく完成度が高い。登場人物の感情の動きがキレイに整頓されている。しかも笑いを生む為のシチュエーション作りも随所になされ、いつピーターが二人の画策に気づくのかと、ハラハラさせてもくれる。そしてラストのオチの外し方もアレンならではの荒技だ。なんの脈絡もなくアレン演じるマジシャンは死ぬのだが、ここまで完璧なシナリオを作っておきながら、最後に監督、脚本、出演の本人を何の意味なく殺してしまうという諧謔さ。
全くこの人にはかなわない。恐れ入る。

ウディ・アレンの衰えぬセンスには、毎回脱帽するばかりです。
世界中がアレンになる理由、それはやはりアレンが天才だからですね。