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映画レビュー「明日へのチケット」

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記事初出:2007年09月09日 seesaaブログからの引っ越し

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基本情報
「明日へのチケット」(2006、イギリス、イタリア)
監督:エルマンノ・オルミ(木靴の樹)、アッバス・キアロスタミ(桜桃の味)、ケン・ローチ(麦の穂をゆらす風)
脚本:エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ポール・ラヴァティ(麦の穂をゆらす風、SWEET SIXTEEN)
製作:レベッカ・オブライエン、カルロ・クレスト=ディナ、ババク・カリミ、ドメニコ・プロカッチ
出演:カルロ・デッレ・ピアーネ、フィリッポ・トロジャーノ、マーティン・コムストン

2005ベルリン国際映画祭正式出品作品

公式サイト
http://cqn.co.jp/ticket/

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今作のDVDです。
  

ストーリーと映画情報
仕事先の秘書に思いを寄せる初老の大学教授。飛行機が全便欠航のため、電車のチケットをその秘書に手配してもらい、電車に乗り込むが、彼女のことが頭から離れない。兵役義務の一環として将軍の夫人の世話をしている青年。彼女の傲慢さにうんざりしつつも、しかたなく彼女の世話を続けている。青年は車内で同郷の少女と出会い、打ち解けるが、夫人うるさくがなり立てるので、しかたなく彼女と別れることに。スコットランドのグラスゴーからやってきた青年三人。彼らは、ローマでのチャンズオンズ・リーグでのセルティックの試合を見る為にはるばるやって来ていた。しかし、乗車券が無くなっているのに気づき、三人は難民家族に詰め寄るが、難民の境遇を思い、思いがけない行動に出る。
オルミ、キアロスタミ、ローチという世界的巨匠による夢のコラボレーション。

3巨匠からの贈り物
これは、宝石のような宝物だ。エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ・ケン・ローチの三人が一同に会すだけでもすごいが、たんなる顔合わせのオムニバスではなく、人間をしっかりと描いている。今年見た作品でおそらく、5本の指に入ってしまうであろう傑作。エルマンノ・オルミは、オペラ演出も手掛けるイタリア映画界の重鎮。アッバズ・キアロスタミは、イラン映画の存在を世界に知らしめた哲学的とも云えるテーマを日常に中に見出す天才。ケン・ローチは、60年代のデビュー以来、一貫して市井の人々の悲しさ、つらさ、やさしさ、そしてたくましさを描き続けて来た真のヒューマニスト。それぞれの監督が、三者三様の人間ドラマを紡ぎ、それでいて一つの作品としてまとまりのある作りになっている。

一つ目のエピソード。美しい秘書に魅了された初老の大学教授。人生も後半に差し掛かった彼の心に瑞々しい感覚が甦る。夢と美しい思い出に心を満たされた老人は、難民家族にミルクを差し出す。いくつになっても恋心は、人の心を豊かにしてくれる。例えそれが就中しなくても。
二つ目。横暴な老婦人に使用人をしている青年。始めに二人の関係を明かさずにエピソードは進んで行く。婦人の言動には、見ているこちらも辟易させられる。序所に青年と婦人の関係が明らかになる。どうやら上官の奥さんの世話をしているようだ。彼には、同郷の女性と思いで話に花を咲かせる自由も与えられていない。自由を求めて青年は、行動にでる。婦人の最後の表情は、キアロスタミにしか撮れないリアリティがあった。三つ目。チャンピオンズ・リーグの大一番を見ようと、はるばるスコットランドのグラスゴーからやって来た若者三人。マンチェスターUのシャツを来たアルバニアの少年と打ち解け、食べる物のない彼の家族にサンドイッチを分けてやる。しかし、その後、乗車チケットが無くなっている事に気づき、三人はアルバニアの難民家族を疑い始める。「ただのスーパーの店員のオレ達に難民問題なんて解決できやしないよ」と余計な親切心をだすべきじゃないという結論に達する。しかし、難民家族の現状に心を悩ます若者は、以外な行動に。ケン・ローチのなんと人間愛にあふれたエピソードか!この短いエピソ-ドにケン・ローチイズムが全開に溢れている。

電車と共に運命は行く
様々な人が、それぞれの人生を抱え、電車に乗り込む。そうして彼らの運命は電車と共に進んで行く。この映画は、当代随一の三人の監督による人間賛歌だ。