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「ギリシャ人20人と話しました」を読んでの感想

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この2つの匿名ダイアリーは面白い。

面白かったんで、とりとめのない感想でもひとつ。

ギリシャ人20人と話しました

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ギリシャ人20人と話しました 続き

これを読んで、ギリシャ人は自業自得を他国のせいにする勝手な民族という印象も持ちうるけど、同じ状況が日本にも訪れた時、自分らの責任と言える日本人は果たしてどれだけいるのか。

自分たちは今までと同じ生活を送っていただけで、特別贅沢をしたわけではない。きちんと働いてもいる。にもかかわらず突然こういう状況になってとまどっている。これが自分たちの責任だと言われてもしっくりこない。

ユーロ加入後、融資のダイレクトメールがうるさいほどにくるようになった。金融機関はどこも「借りろ、借りろ」の大号令で、要りもしない融資を押し売りのように押し付けることもあった。その大本は外国の資本のはず。そういうことをしておきながら、今になって銀行が犠牲者みたいに振る舞うのは釈然としない。連中は金儲けでやっていただけ。

政府は確かに腐敗し、虚偽の報告をしていたが、ギリシャは弱い統治力を外国資本に付け込まれた。政府はずっと腐敗していたのだから、今になって急に腐敗したわけではない。腐敗しているなりにそれなに回っていたものを、外国資本に介入されてこういうことになってしまった。弱いことは問題かも知れないが、こうなったそもそもの原因は政府の腐敗ではなく、外国資本の行動にある。

当事者意識や責任感の欠如であるんだけど、国家単位の責任感や当事者意識を持つなんて芸当は普通の人間にはできないと思うんですよ。
それを作ろうとすると、下手すればナショナリズムの煽りにもつながりかねないし。

国家ってある意味で巨大な偶像というかフィクションだと思うんで、そこに個々人が責任感を本気で持たせるのは難しい。
だから統治システムのしっかりした構築が大事なんだし。

個々人が幸福の追求をした結果(悪い言葉で言い換えると個々人が勝手に振る舞った結果?)、全体が良い方向に行くためのシステム構築。国づくりって究極の目的ってそういうもんだよね、きっと。理想論ですが。

しかし、僕はギリシャについて何にも知らないんだなあ、とこれの後半読んで思いました。

 

ギリシャ政府を選んだのはギリシャ国民なのだから政府を批判してことたれりとしているギリシャ人のメンタリティはおかしいのではないかともインタビューをしたすべての人に聞きましたが、うん、そうだね、みたいなことを言ったのは、日本在住15年歴のある老人のみでした。彼は物の見方が一般的な日本人とほとんど変わらないというか、ギリシャに対して、場合によっては辛辣すぎる見方をしていたので、ギリシャではなかなか生きづらいのではないかと思います。そう聞いたら、「そうだね、横浜の水準に慣れてしまっていたから、帰国して数年はいちいち腹を立てていたものだが、今もし日本に戻ったら、私なんてまるで使い物にならないだろうね」と笑っていました。彼が言うには、もともとギリシャは地政学的な理由から列強によってこしらえられた国で、ギリシャ人というまとまりもなかった。そこでありもしない古代ギリシャとの連続性を持ち出して、ナショナリズムを煽った。作られたものだから空虚で地に足がついていない。それに加えて第二次世界大戦中から戦後には血で血を洗う内戦があり、軍政もあった。公共に対する一体感や責任感は育ちようがない。数々の矛盾をその時々に解決するのではなく、民主主義政権はネポティズムで支持者を増やしたり、福祉で懐柔して、やり過ごしていただけだ。ギリシャ人にはナショナリズムはあっても愛国心はない。

古代ギリシャとの連続性は作られたフィクションみたいなもんなんですか。そうなのか。

ホントに延々と続くギリシャの哲学みたいなもんがあるのか、と思っていましたが。。。
地政学的な理由で列強の干渉を常に受けやすい土地である、というのは納得。旧ユーゴもそうですが、元々多民族、多言語でけっこうバラバラだったのをナチス対抗で団結して、その後チトーのカリスマによってかろうじて一つの国家になっていただけだったもんな。

それがギリシャの場合は、手厚い社会保障と福祉政策によるごまかしだったのか。

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